「この会社に10年は働いて、ディレクターレベルまで昇進するんだ」と入社時点では意気込んでいたよね、と同期の友人に言われました。
結果、2年で去ることになりました。
組織での在籍期間としては、短いかもしれません。
以前この会社で働き続けられるのかという記事も書いていました。
たった2年、されど2年ですが、結果、合わないと感じてからは前に進めませんでした。
辞めてからというもの、「転職エージェントってぶっちゃけどうなの?」という質問をよく頂くので、
この2年間を振り返りながら、私自身が見た転職エージェントという仕事について、私の独断と偏見ですが、書いてみたいと思います。
「転職エージェントになることを考えている方」や、「転職エージェントからよく連絡もらうのだけどどんな人なのか気になる方」など、お役にも立てば幸いです。
転職エージェントの夢と現実
「転職エージェントってこんな仕事!」と入社前に自分自身も持っていたイメージと実際にやってみて、学んだことを比較しながら、書いてみたいと思います。
私の場合、以下の3つのポイントを現職への入社時の軸として持っていました。
- 年収「目指せ、30代で1,000万」
- 人材紹介という仕事
- 海外でも働ける
まずは、これらが実際にそうだったのか見ていきたいと思います。
30歳、年収1,000万が現実になる仕事
転職エージェントは稼げる仕事とよく言われますが、見方によっては噓ではないと思います。
私が勤めていた転職エージェントでは、年4回支払われるパフォーマンスに応じたボーナスがあり、またその額は青天井という給与体系でした。
そのため、成績が良ければ、20代半ばで、1,000万以上を稼ぐ、
またスムーズに昇進すれば30歳になるまでには、部下が5名いる、というのも当たり前の正真正銘の実力主義の社会でした。
社内のメンバーもグローバルで、国籍や年齢に関わらず、成果を出した人が評価される環境でした。
現実は、こんなにうまくいっているのは感覚知的に上位の10%程度です。
どこの会社も一緒ですよね。
少なく見積もっても半数は日々のKPIに追われながら、ボーナスにヒットできるのかの境目であくせく働いているのがリアルです。
転職エージェントは、営業職です。
人材業界というと人事や採用などありますが、その中でも転職エージェントは営業職になります。
それもあって、給与形態はパフォーマンス連動型の賞与となっています。
また、この後にも書いていますが、人材を扱う営業は特殊です。
そのため、紹介の利率が高く設定されています。
成功報酬は扱う求人によって異なりますが、私の場合年収800~1500万円レンジの求人を扱うことが多かったです。
報酬は平均して35%程度だったので、1紹介200~400万円程度でした。
単価だけ見ると車のセールスのイメージでしょうか。
結果から言うと、自分自身にはそのやり方が合わなかった、自身の強みが活きる土俵では無かったのが退職を決めた1番の理由でした。
入社時点では、前職のスタートアップのカオスな環境から、評価制度が整っていて、昇進のプロセスが明確な企業へ行こうという思いで行きました。
結果的に、この明確すぎる評価制度に苦しめられました。
売上さえ上げていれば、会社から認められ、昇進のプロセスも売上が評価の大きな割合を占めます。
昇進のプロセスとしては、
アソシエイト>コンサルタント>シニアコンサルタント>マネジャー>ディレクターとなっていきます。
マネジメントのキャリアパス、もしくはエキスパートとして生涯ヘッドハンターを突き進むか、選ぶことができます。
ボーナスの制限はなくパフォーマンス次第なので、優秀なコンサルタントはマネージャーよりも稼いでいることも珍しくありません。
逆にいえば、売上以外のところを評価する方法が社内になく、それ以外の部分で評価指標がなく、自分自身の価値を説明しきれなかったことがあります。
また、この売上至上主義の中で評価されてきた人材を上司に持ち、良い関係を築けなかったのも転職のきっかけになった理由でした。
エースプレイヤーが良いマネージャーであるかというとそういうわけでは無いことを身をもって感じました。
人材を紹介するという仕事
転職というのは、人生の岐路である大きなイベントです。
その数多くないライフイベントに立ち会うのが転職エージェントです。
企業にとっても、適切な人材を採用することで、ビジネスが変わる、インパクトの大きな投資です。
そういった大きな決断が関わることもあり、人をコントロールできない、というところが他の商材を扱う営業と違う部分であります。
現実はコントロールできない要素が多すぎて、私の場合、調整によるストレスに常にさらされる毎日でした。
人事と普段は話していますが、面接プロセスに入れば、直属の上司となる採用担当者や、決裁者である本部長クラスの方や、会社の代表など様々なステークホルダーの意向が入り混じり選考が進んでいきます。
企業側もどんな人材が必要であるのかを、採用活動をしながら解像度を上げようとしています。
求人も、候補者もスペックとして明確なものがないので、面接というプロセスを通しながら選考していきます。
面接で会ってみたら、違ったというのもザラですし、ステークホルダーによって、全然違う意見を持っているケースも少なくありません。
エージェントがやっている仕事は、そういった求人を代理人として候補者の人に紹介する、というかなり難易度が高く専門性が求められます。
社内の人事担当者が会社の魅力をアピールするだけではなく、第三者が業界的にこのポジションがどういう立ち位置なのかを説明することで、リーチできない層にもアプローチすることができます。
それもあり、エージェントは専門性が高く、需要があるサービスなのだと思います。
ただ、提供できるサービスはどれだけ工夫しても、究極は「人材の紹介まで」でしかないです。
私自身は、前職で日本市場一人目の担当者として海外スタートアップに入社し、結果的に自分よりもシニアな人材を採用した経験から、人材業界に強い関心を持ちました。
複数の会社に対して、採用でのインパクトが与えられる職業として選んだ部分もあります。
ただエージェントとしては、企業の採用計画に入っていったり、採用後の人材の今後に関わることはほとんどできません。
所詮は、外部の人材紹介エージェントでしかないので、マーケットの情報提供により意思決定に影響を与えることができる程度です。
実はこの点は入社時点から直属のマネージャーに指摘されていたことでした。
「企業の人材戦略にかかわるなら、インハウスに行った方がよい。エージェントはもっと営業的で企業のニーズに応じて最速で人材紹介をすることまでがスコープである。」と明確に言われていました。
しかし、未経験で企業のリクルーターになるのが難しく、また営業というスキルも身につけたかったので、エージェントへの転職を決めました。
結果、私の場合、空いているポジションを最速で埋めることに特化したプロ集団に、私自身は中長期的にコミットができませんでした。
海外オフィスへの転籍ができる仕事
実際にアジアの他拠点のオフィスへ転籍した先輩がいました。
また海外のオフィスから日本オフィスへやってくる人もいました。
その点、転職エージェントという仕事は、ある程度世界共通の仕事であると思います。
コロナ禍が明ければ、海外を拠点に働ける仕事を手に付けようと思い入社したのは間違っていなかったと思います。
現実は、経験の無い海外市場で、自身の成果を出し続けることが当たり前に求められるのは、かなり過酷だと思います。グローバルでも戦うのは甘くない…。
ほかのアジア拠点に行った人は、私自身を採用したTA(リクルーター)のAさんでした。
Aさんは入社時から希望を出していて、叶ったのは5年後で、蓋を開けてみたら、日本オフィス初の日本人の海外リロケーションでした。
どこででも成果を出せることが証明できないと、受け入れる側も受け入れることができません。
Aさんも国内トップレベルの優秀なコンサルタントでした。
また、その人の上司が先にその拠点に行ったというのもタイミング的に良かったのかもしれません。
また一方で、海外からやってきたマネージャーレベルのコンサルタントもいましたが、かなり苦労をしていました。
これまで長く日本でやってきた他のコンサルタントと同じ成果を出すことが求められるので、かなり苦戦し、結果的に去る人もいました。
世界で戦える人材であることを認められ、また結果を出すというのは甘くないですね…。
入ってから学んだ転職エージェントという仕事の裏側
入る前には知らなかった転職エージェントの側面にについても書いてみたいと思います。
業界の専門家になれる仕事
企業リクルーターと転職エージェントの比較で言われるのが、業界に対して横断的に関わることであるとよく言われます。
エージェントは担当領域の企業の案件を担当するので、職位ごとの給与の相場や、採用の難易度の違いなどを横断的に知ることができます。
転職活動をしている候補者から、退職理由も聞くので、業界のニュースやネットの口コミだけではわからない会社のカルチャーや、やり方という生の情報に触れることもできます。
年収についても、どれぐらいの経験があれば、いくらぐらい稼げるというのも大体見えてきます。
企業によって待遇も違うので、その分その企業の業績や、採用の注力具合から今後投資をしていこうとしている分野などを知ることができたのは、非常に面白いポイントでした。
常に期待値コントロールが求められる仕事
よく「Expectation Management(期待値コントロール)はできているのか」と日常的に確認されます。
候補者と初めて話すとき候補者の状況に合わせて、今回の電話の用件や今後のサポートについての認識があっているのか、
候補者の紹介に苦戦しているとき、企業にこの採用が難しいことを伝えられているのか。
オファーが出るときに、求職者の希望する水準で、企業が準備しているのか。
など、様々な場面で期待値コントロールが求められます。
ベストは、合格点ギリギリに低く見積もっておいて、結果は120点をデリバリーすることをマインドセットとして見についたと思います。
低く見積もりすぎても、市場をわかっていない、足元を見られていると信頼感を失ったり、できもしない約束をして、デリバリーに追われて苦しくなり、結果出てくるものも期待以下とならないよう、水準を作るのは自分の仕事であると学びました。
門戸が開かれた仕事
他業界からの転職者も多いです。
企業リクルーターをしていた人もいますし、
全然違う業界の法人営業や、リテール店舗での営業をしていた人など様々なバックグラウンドの人がいます。
私自身も人材業界の経験なく転職しました。
仕事において、「人とコミュニケーションを重ねる」ことが肝になるので、営業力とコミュニケーション能力を磨きたければ、業界初心者であっても挑戦ができる業種でもあると思います。
大手のエージェントでは、職種ごとに専門のチームを持っており、これまでの職種の実務経験を活かし、その職種に特化した人材紹介をしている人もいます。
私の場合は、マーケ職のバックグラウンドから、マーケ職の求人を紹介していましたし、元パラリーガルの後輩は、法務の求人の担当をしていました。
また、やったらやった分だけ給与も支払われるので、その点自身のペースでコントロールもしやすい職業でもあります。
有給の日数は初年から年間20日ということもあり、年に2回程度1週間近くまとまった休暇を取る人も多かったです。
よく転職エージェントは個人事業主と言われますがまさにそうだと思いますし、実際に独立してフリーでやっている人も多いです。
担当する職種がカギを握る仕事
今流行りの職種は花形です。
例えばエンジニア職は、ITへの投資が進む企業がコロナ禍以降増え続けているので、どの企業も採用に投資をし続けています。
人材も給与アップを目指して、より良い条件であれば、転職を考えるのもタブーではないというのがほかの職種よりも考え方として浸透しています。
そういった業界では、転職市場におけるプレイヤーも多いものの、紹介の報酬のパーセンテージも格段に高かったりします。
業界平均として、オファー年収の30%~40%がエージェントへの報酬として支払われますが、ポジションの緊急度によっては80%~100%の利率を設定して募集をしている企業も増えてきました。
一方で、エージェントにとって“おいしくない”職種もあります。
エージェントに頼まなくても企業で採用ノウハウがある職種や、会社にそもそもヘッドカウントとして多くない職種は、エージェントに回ってくる案件の母数自体も小さく、紹介に至ったとしても、報酬の金額も低いケースが多いです。
これはいちエージェントにとって成績を上げていくうえで、死活問題です。
例えば800万円台のミドルクラスと1,500万円を超えるシニアクラスの人材紹介では、実はエージェントの作業量という観点からすると、あまり変わりなかったりします。
そうすると、報酬の利率がよく給与レンジが高い職種を担当しているコンサルタントが稼ぎやすいというのはあります。
グローバルな環境で働ける仕事
上司も同僚も外国籍の人という点で、日本に居ながらにして多国籍の文化の人たちと働くことができました。
いろんな人がいます。笑
印象的だったのが、サボる人に対して一生懸命働きなさいとマネージャーがフィードバックをしていたことでした。
てここまで堂々とサボる人がいて、その人をマネージャーが指摘する場面を初めて見ました。
生真面目に働けば成果が出る訳でもないのですが、こんなにうまくサボる言い訳をする人もいるのかと感心したほどでした。
そのサボる人も、結果は出しているので、本当にやるべきことを取捨選択して、効率よく働くことの重要性を学びました。
外資系企業のリスク
社長が変われば、方針が変わり、経営方針の転換の結果、人材コスト削減が求められると言うのが普通にあります。
外資系がリスクとして挙げられるのは、まさに日本にビジネスにおける最高責任者がいないところにあると学びました。
ここでまた難しいのが、本社のあるヨーロッパから見れば、日本はアジアの一部としか見えないのか、日本だけの成績ではなく、APACの一国として見られ、他国と同様にフィードバックを受けるということがありました。
会社として、定着率が高く無いので、前提として「去る者は追わず」マインドの元、実力主義社会で成果を出せない人は、マネージャーからどんどん詰められるばかりでした。
こうした波を乗り越え、エージェントを長年続けている人は本当にすごいと思います。
インハウスへのキャリアパス
エージェントを数年やった後、企業リクルーター(インハウス)になるというのは、実際に過去の卒業生にも多くいました。
私の場合は、インハウスかエージェントかという選択肢ではありませんでした。
そのためあまり書くことができません。
私の興味としては、営業としてサービスを売る中で、その効率を上げていくことや、売れるサービスを作っていくマーケティング領域に興味をもち、そちらにキャリアを変えられるチャンスを掴んだことも今回転職を選んだ理由でもあります。
番外編:どんなエージェントを信じればいいの?
転職サービスに登録して、エージェントからのアプローチをもらっている方だと、気になりますよね。
過去の同僚の人とも話すのですが、共通しているのは
「連絡が丁寧な人」
は一つのポイントか、と思います。
選考プロセスの各所で交渉が絡むので、押しが強い人というのも、重要な要素でもあると思います。
エージェントに限らず「仕事ができる人」というのは、
言葉選びが適切で、的を得た、簡潔なコミュニケーションをする人、だと個人的に思います。
そうした人は、クライアントとの関係性を築けているケースも多く、
「Aさんが紹介する人なら…。」と、選考がスムーズに進みチャンスを得られるケースも多いように思います。
エージェントもいろんな人がいます。
“Work Hard, Play Hard.”な生活を送っているバリバリの外資系営業マン風の人だけではなく、
子供がいて、育児とエージェント業を両立している人もいますし、
担当職種の実務経験を持ち、今はエージェントで働いている人など様々です。
「でも、そんな良い人どう見極めるの?」と思う人も多いのではないでしょうか。
一つの目安として、「定期的な連絡をくれる人」は一度話してみてもいいかもしれません。
転職サービス、登録直後の2週間~1カ月は多くの紹介を受けるかもしれません。
たとえ、そのタイミングで応募をすることに至らなかったとしても、
3か月おきぐらいに連絡をくれるエージェントがいたとしたら、
その人はあなたのプロフィールを見て、適切なコールリストに入れるような丁寧な人なので、話してみてもいいかもしれません。
以上、個人的な偏見ばかりかも知れませんが、見極めのヒントになれば幸いです。
エージェント選びのポイントについてはこちらの記事もご参照ください。
まとめ
転職エージェントは、向き不向きがある仕事だと思います。
どんな仕事でも同じ当たり前のことかと思います。
ただ、特にエージェントは、門戸が広く開かれており、人材業界におけるプロに誘われるので、バイアスが掛かった状態で紹介を受けるケースも多いと思います。
私も当時「ここしかない」とその時の最善の判断をして入社しましたが、入る前のイメージと合う/合わない部分もありましたし、実際に働いてみて発見することも多くありました。
振り返ると、学んだことはあり、今の経験の上に次のチャンスが巡ってきたことを実感します。
次も人材に関わる仕事ということで、人材という軸が自分のキャリアの中で出てきたのかな、と思いつつまた次の挑戦にトライしてみたいと思います。
お役に立てば幸いです、ではー
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